後立山(長野/富山) 小スバリ岳(2740m)、スバリ岳(2752m)、針ノ木岳(2820.7m) 2022年7月2日  カウント:画像読み出し不能

所要時間  0:52 扇沢市営第一駐車場−−0:57 登山口−−1:10 林道入口−−1:27 車道終点−−1:29 堰堤(梯子で越える)−−1:32 雪渓で左岸に渡る−−1:43 大沢小屋−−1:53 雪渓に乗る(標高1740m付近)−−2:57 ヤマクボ沢出合−−4:04 ヤマクボノコル 4:08−−4:20 小スバリ岳−−4:27 スバリ岳 4:29−−4:47 ヤマクボノコル 4:50−−5:11 針ノ木岳 5:34−−6:08 針ノ木峠−−7:03 蓮華岳 7:25−−8:04 針ノ木峠−−8:16 ヤマクボ沢出合−−8:37 夏道に乗る(標高1740m付近) 8:41−−8:47 大沢小屋−−8:54 雪渓で右岸に渡る−−8:57 堰堤−−8:59 林道終点−−9:17 林道入口−−9:28 登山口−−9:32 扇沢市営第一駐車場

場所長野県大町市/富山県中新川郡立山町
年月日2023年6月10日 日帰り
天候稜線は薄曇り。南西の風 強→弱。下界は雲海の下で曇
山行種類残雪期の一般登山
交通手段マイカー
駐車場扇沢駅直下の有料駐車場より下に市営無料駐車場あり。ただしハイシーズンには早朝に満車になるので注意
登山道の有無あり
籔の有無藪漕ぎのレベルではないが林道終点〜大沢小屋荷揚げ用作業道は笹等が登山道にはみ出した区間あり
危険個所の有無雪山経験者なら無しと言えるが、夏山専門登山者にとっては針ノ木峠直下の急雪面、針ノ木峠〜針ノ木岳間の急雪面トラバースが滑落の危険あり。経験と装備の両方が揃わない場合は雪が溶けて夏道が完全に出てから登るべき
山頂の展望小スバリ岳、スバリ岳、針ノ木岳、蓮華岳とも晴れれば大展望
GPSトラックログ
(GPX形式)
ここをクリックしてダウンロード
コメント2週間前にも登った針ノ木岳へ。今回は往路でヤマクボ沢を登り、スバリ岳を往復して針ノ木岳に登り、針ノ木峠から蓮華岳を往復して針ノ木雪渓を下って扇沢へ戻った。扇沢〜針ノ木雪渓間は篭川沿いはほぼ雪が消えて藪が続くので大沢小屋荷揚げ用作業道を利用した。ヤマクボ沢はカールのノドの部分で雪が消えてハイマツ藪が出ていた。針ノ木岳〜針ノ木峠間はまだ夏道は峠付近のみで、他は雪の急斜面のトラバースの連続でありピッケル、アイゼンと急斜面における雪上歩行技術が必須。雪が消えた稜線では花が咲き始めており雪渓より下は既に花盛りだった。残雪期と夏山の端境期で入山者は少なく、雪渓ですれ違ったのは6人だけだったし有料&無料駐車場とも空きがあった


針ノ木峠東から見た針ノ木岳、スバリ岳、小スバリ岳。往路はヤマクボ沢を登った


市営第一駐車場を出発。がら空き状態 ゲート横から登山道に入る
林道へ 鳴沢から押し出したデブリを乗り越える
堰堤には2週間前に無かった梯子がかけられていた 篭川左岸の作業道
大沢小屋は今季営業前。大沢小屋から夏道を歩く 標高1740m付近で雪渓に乗る
ここまで星が見えなかったが蓮華岳の稜線に月が出た 標高2400m付近。暗闇の中、ヤマクボ沢を登る
標高2500m付近。雪解けが進んでハイマツが出ている 標高2550m付近。傾斜が緩んでカールに達した場所は雪が無い
鞍部(ヤマクボノコル)まで残雪のカールを登る ヤマクボノコルで荷物をデポしてスバリ岳に向かう
ヤマクボノコルからカールを見下ろす ヤマクボノコルから針ノ木岳を見上げる
スバリ岳へ向かう。残雪は皆無 小スバリ岳手前
小スバリ岳山頂 小スバリから見たスバリ岳
小スバリから見た南側の展望。常念山脈や槍穂、裏銀座方面とも雲の中
小スバリ岳から見た北側の展望。立山、剱岳、鹿島槍ヶ岳以北は雲の中
スバリ岳への最後の登り スバリ岳山頂標識。低い位置に設置されている
本当のスバリ岳山頂の岩 赤沢岳方面へ下る道の雪は消えていた
スバリ岳から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
午前4時半過ぎに雲の上から日が上がる 針ノ木岳に朝日が当たる
芽吹いたばかりのハクサンイチゲ。既に蕾がある コメバツガザクラ。たくさん見られた
カール ヤマクボノコル
ミヤマキンバイ ミヤマキンバイの花の拡大
デポしたザックを背負って針ノ木岳に向かう 黒部湖
針ノ木岳への登り ガレの積み重なったジグザグ道
先週は残雪があった場所はすっかり無雪に ザレた斜面の登り
針ノ木岳山頂。南西の風が強く岩陰で休憩
針ノ木岳から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
次は蓮華岳に向かう 小動物の足跡
雪壁から見下ろす。だいぶ雪が減った 雪壁中央ではなく短距離の西端を下った
左側の夏道がある岩を下った 2週間前は雪に埋もれていた夏道
ここからトラバースは2週間前と変わらず トレースが残っていた
前方の岩の向こうに雪がつながっているか不明のため下を巻くことに カールを見下ろす。だいぶ雪が減った
ここだけ夏道が出ていた 夏道から真横へトラバース
下ってきた雪面 岩直下でトレースに合流
下ってきたルート。雪解けが進む来週以降は確実にこのルートに切り替わるだろう
大型連休中はこの岩峰を越えた 標高2630m付近
雪解けが進んでヤマクボ沢は来週はもう使えないかな 雪渓上に1人だけ人影あり
テント場はごく一部が出ていた ヒメイチゲ。ここで見たのは初めてかも
針ノ木峠 針ノ木峠から針ノ木雪渓を見下ろす。人影無し
針ノ木峠から蓮華岳方面を見上げる 小屋周辺の雪解けはかなり進んだ
イワカガミはまだ咲いていなかった ザックをデポして空身で蓮華岳に向かう
標高2650m付近。南西の風が強い 標高2680m付近
咲き掛けのミヤマキンバイ 2754m峰から見た蓮華岳
2750m峰から見た蓮華岳 大沢右俣。まだ雪がつながっているのかは見えない
蓮華岳山頂西の肩 蓮華岳山頂東の肩(三角点)
蓮華岳から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)。だいぶ雲が取れてきた
蓮華岳から見た常念山脈と槍穂
蓮華岳から見た北葛岳、七倉岳 蓮華岳から見た柏原新道。だいぶ雪が減っている
蓮華岳から見た後立山北部 蓮華岳から見た剱岳
下山開始 2754m峰から見た針ノ木岳
キバナシャクナゲ。まだ開花は僅か 今年初のミネズオウ。これも開花は僅か
2週間前の残雪は消えていた 針ノ木峠を見下ろす
デポしたザック 針ノ木峠。まだ無人のまま
針ノ木峠から針ノ木岳方面 針ノ木雪渓を下る
峠を振り返る 標高2270m付近。初めて人影が見える
ヤマクボ沢出合
ヤマクボ沢の一本下流側の雪渓を間違って登っていた2人組 標高2050m付近
標高1900m付近 ミヤマダイコンソウ。標高1900m付近の左岸の高い場所に咲いていた
標高1870m付近 ショウジョウバカマ
オオバキスミレだと思う 標高1780m付近
シラネアオイ。雪渓下部左岸に見られる 標高1740m付近で雪渓を離れる。残雪期用の道あり
雪渓取付き点から上流を見ている 夏道との分岐点。左の沢に下る明瞭な道がある
オオカメノキ 大沢小屋
大沢小屋のすぐ先から右の作業道へ入る キヌガサソウ
スズランの蕾かなぁ サンカヨウ
ツマトリソウ 登りでは標高1650m付近で沢沿いを離れて右の道へ上がる
左岸の明瞭な道 今年初のオオバミゾホオズキ
ヤマガラシ タネツケバナ
標高1610m付近で右岸に渡る。無雪期は橋が架かる場所 残雪上から上流を見ている
大沢右俣。かなり雪が減っている 残雪で右岸に渡った場所。道の入口に目印あり
沢を埋める大量の残雪を振り返る エンレイソウ
堰堤の上流側 堰堤の下流側
右岸側の作業道 林道終点
タネツケバナ おそらくニョイスミレ。今回見たスミレはこれだけ
キジムシロ キジムシロの花
キジムシロの葉。三つ葉だけではないのが特徴 鳴沢から押し出したデブリ
ネコノメソウ。2週前よりかなり減っていた ノビネチドリ
今年初のベニバナイチヤクソウ タニウツギ
葉の様子からしてクルマムグラっぽい 林道起点
ミヤマキンポウゲと同じ花。高度からしてウマノアシガタか 葉もミヤマキンポウゲと同じ
今年初のズダヤクシュ タチカメバソウ。残り少ない
開花直後のミヤマカラマツ ノビネチドリ
下山時の最後のショートカット道入口のペイント 下山時の最後のショートカット道入口
オドリコソウ全体 オドリコソウの花
扇沢駅の裏手。バスを洗車中 ゲートと登山口
扇沢駅。観光バスが多い 有料駐車場はカラガラ。山と同じく観光も端境期か?
道路脇のスズラン。人間が植えたものだろう 扇沢から見た鳴沢岳付近
篭川で工事中 調べた結果、クサノオウ。ぱっと見ではミヤマキンポウゲ似
無料の市営第一駐車場。まだ空きがあった 駐車場で咲残ったニリンソウ


 今週末のお天気は金曜日に前線が南下して北アルプスは回復の予報だが、まだ前線に比較的近い位置にあるので山の上は強風予報。気象モデルによって異なるが朝方の風は西寄りで平均風速は10〜15m/s。強い方の値では台風並みであり先週末と同じような予報。吹きさらしの稜線歩きが長い山ではリスクが高いので、今回は稜線まで風がブロックされる針ノ木岳とした。これなら針ノ木峠経由でもヤマクボ沢経由でも風を受けるのは短距離で済む。

 ルートの心配はヤマクボ沢の雪がまだ残っているか、そもそも扇沢から雪渓末端までの篭川沿いの雪がどれくらい残っているのかが問題。篭川沿いの冬ルートは2週間前で藪漕ぎ状態だったから、今回は夏道か大沢小屋の荷上げ道を利用するのが得策だろう。距離が短いのは大沢小屋の荷上げ道だが、堰堤を越えるための梯子がかかっているかどうかが問題。でも6月4日(日)に針ノ木岳慎太郎祭(開山祭)が開催され、この時は例年だと大沢小屋の荷上げ道が利用されるはずなので、おそらく梯子が架けられたと予想した。いざとなったら土の斜面を登れるだろう。ヤマクボ沢については短距離ならば雪が無くても問題なく歩けるのは昨年に経験済みなので大丈夫だろう。

 ルートには2週間前に使った大沢右俣の利用も考えたが、あれから2回の大雨があったので雪解けがかなり進んだのは間違いなく、雪が途切れているリスクが高いと判断して使わなかった。

 金曜夜の扇沢市営第一駐車場はガラガラで、おそらくこれまで見た中で最も車が少なかったと思う。翌日日中でも満車になっていなかったし有料駐車場もガラガラだったので、この週末はかなり車が少なかったのは間違いない。一番奥の駐車箇所で酒を飲んで仮眠。夜中に駐車場に入ってくる車もほとんどいなかった。

 夜中0時過ぎに起床。外に出て空を見上げると星は全く見えないが、予報では日中は晴れるはずなので飯を食って午前1時前に出発。駐車場の車は全て真っ暗だし、当然ながらこの時間に歩き出す登山者は他に皆無だった。今回の冬装備は10本爪アイゼンに軽ピッケルとした。

 夜中でも煌々とライトが輝くゲート横の登山道を通過。登山道の周囲の草はかなり伸びてもう冬枯れの様子はない。2箇所目の舗装道路に出たところで登山道を離れて舗装道路を歩き左に分岐する林道へ。まだ真っ暗だが道端にはベニバナイチヤクソウが咲いていることが分かり、下山時に写真撮影することに。

 鳴沢出合のデブリはまだ残っていたが2週間前の高い山からずいぶん小さくなっていた。そこから先は林道終点まで雪は無く、荷上げ道に入っても全く雪は無かった。そして問題の堰堤に達すると立派なアルミの梯子がかかっていた。堰堤を越えてしばし直進して赤沢出合で広大な残雪で篭川の流れが埋もれたところで対岸へ渡る。無雪期はここには橋がかかっているが、おそらく雪の時期は橋は撤去されているだろう。そうでないと橋は毎年破壊されてしまうだろう。

 残雪帯は広大なので対岸のどこに荷上げ道が続いているのか判別できなので、とりあえず最短で対岸に渡ってからは残雪と地面の境界付近を上流側へと歩いていくと明瞭な道が登場。これが荷上げ道の続きである。あとはこのまま道を辿ればいい。道の両側には数種の花が咲いているがまだ真っ暗闇なので撮影は帰りがけに。

 大沢小屋手前で夏道に無事に合流。そのまま夏道を進むが、この時期はそのまま直進ではなく標高1740m付近で左に下る道筋へと入る。ここを下れば夏道より早めに雪渓に下ることが可能で、通常ならこの時期はまだ雪があるはずである。もし雪がまだ無くても沢の幅が広いので左岸を歩くことができるだろう。幸いにして今回は下ってすぐに残雪に乗ることができ、ちょうどこの付近が雪渓の末端であった。

 雪渓に乗るがまだ傾斜が緩いのでアイゼンは装着せずに登っていき、傾斜が増す標高2000m手前でアイゼンを装着した。雪渓の幅が広くライトの光では端まで光が届かないし、足元を照らして歩いているといつの間にか谷の端に寄っていることが多く、登りではルートは大きなジグザグになっていると思う。気が付けばいつの間にか頭上の雲が取れて月と星が輝き、下流を見下ろすと雲海になっていた。

 ヤマクボ沢出合到着時はまだ周囲は真っ暗な時刻で狭い範囲しかライトで見えないが、何度も通過した場所なので間違えることは無い。逆に言えば初見でここを暗闇の時間帯にヤマクボ沢に入るのは難易度が相当高いと思う。木曜日に結構な雨量の雨が降って古い足跡はすっかり解けてしまったので、雪渓上には足跡は皆無だった。

 ヤマクボ沢に入ると徐々に傾斜が増してきて軽ピッケルを取り出す。とは言え雪質は適度に緩みがあるし大沢右俣よりは傾斜が緩いのでピッケル無しでも問題なく登ることができるが。ヤマクボ沢はこのまままっすぐ登るとカールの北側の谷に入ってしまうので適度な場所で左にルート変更が必要であるが、まだ真っ暗なのでカールに至るルートは見えない。仕方が無いので途中から雪渓の左端(南端)に移動してそのまま雪渓とハイマツ藪の境界を登っていく。これでうまい具合にカールに出ることができるのか分からなかったが、雪が消えると同時に傾斜が緩んだことでカールの縁に到着したことが分かって一安心。幸いにして雪が消えた場所はハイマツの海ではなく露岩が多くハイマツ漕ぎの必要はなかったし、その距離は20m程度であった。

 無雪帯を抜けるとカールの残雪帯を登ればヤマクボノコルに到着。この頃にはまだライトが必要ではあるが周囲が徐々に明るくなって広範囲の地形が見えるようになり格段に歩きやすくなった。思ったよりは風は強くはなく、これなら問題なかろうとスバリ岳を往復することにして、荷物を岩陰の風が当たらない場所にデポして防寒装備を着てから空身で出発。

 2週間前に既にスバリ岳までの間で雪が無いのは分かっているので安心して歩ける。稜線上に花が咲いていないか探しながら歩いたら、まだ僅かであるかミヤマキンバイが開花していた。そして花が小さくて目立たないがコメバツガザクラはたくさん花を付けていた。ハクサンイチゲはまだ芽吹いたばかりで花は咲いていなかったが6月初旬なのでこんなものだろう。なお、往路ではまだ暗くて写真がブレるので帰りに花の写真撮影をした。

 最初のピークが小スバリ岳で縦走路を僅かに外れて山頂に立つ。残念ながら今日は雲が多くて周囲の山並みは雲に隠れてしまっている。台風と前線が南にいて湿気が多い空気を送り込んでいるので仕方ない。これからの時期は秋になるまで東の空に奥日光の山並みを見ることは滅多にないだろう。

 縦走路に戻って最後の一登りでスバリ岳山頂に到着。山頂標識は最高点ではなく西側の平坦地に立っている。2週間前には赤沢岳方面への下り始めにはまだ雪があったが、今は全く雪が見えない。冷たい南西の風が強く手袋無しではすぐに手が冷えてしまうが、気温そのものはおそらく+5℃前後はあると思う。そろそろ日の出の時刻だと思うが、東の空の低い位置には雲がかかっているので太陽はまだ見えない。戻って小スバリ岳付近で雲の上に太陽が顔を出した。

 ヤマクボノコルでザックを回収して針ノ木岳へ登る。ここの斜面が最も風が強く時々よろめくほど。風のおかげで防寒着を着たままで登ってちょうどいいくらいだった。手袋は防水防寒のテムレスなので風を通さないので正解だった。2週間前には山頂北側に残っていた残雪はすっかり消えていた。山頂までの間で見た花はスバリ岳と同じくミヤマキンバイとコメバツガザクラだけであった。

 針ノ木岳山頂に到着して風を避けて休憩するため三角点の設置された岩の影にザックを下した。スバリ岳の時よりは雲が少なくなってきたが、それでも槍穂や大天井岳以南、爺ヶ岳以北は立山、剱岳は雲の中。予報ではこれから徐々に風が弱くなるはずであり、もしかしたら時間経過と共に雲が取れてくるかもしれない。上空には薄い雲があるがそれを通して日差しがあり、これから蓮華岳に向けて歩くと正面から日が当たるので顔に日焼け止めを塗ってから出発した。

 2週間前よりも雪解けは進んでいるが北斜面のトラバースはまだ健在なので、最初に雪が登場した箇所でアイゼン装着。雪壁はかなり小さくなって西端直下には岩が積み重なった雪の無い斜面が顔を出しているのでそちらを下り、横に移動して2週間前には雪の下だった夏道に乗った。再び雪に乗るとトラバース開始で古いトレースが残っていた。トレースは緩やかに下りながら前方に見えている岩場の上側を越えているが、岩場の向こう側の様子が見えない。木曜日の大雨で雪が消えているかもしれないので途中からトレースを無視して夏道と同じように岩場の下へ向かうことに。雪は適度な緩み方なので急傾斜でもアイゼンが効くし軽ピッケルもあるのでそれほど恐怖感は無い。

 ごく僅かな距離だけ夏道が出ている場所からは横移動に切替えて、進行方向に見えている岩の基部のトレースを目指す。ここはさらに傾斜がきついが滑ることはなかった。トレースに合流後に振り返ったが、古いトレースが雪が消えた場所を通っているのかは岩が邪魔で見えなかった。ただし、時期が進んで雪解けも進むと今回私が下ったルートに切り替わることになる。その頃にはもっと夏道が顔を出しているだろう。

 尾根に復帰すればもう危険個所は無いが、一段下がって傾斜が緩むまではアイゼンを履いたまま歩いた。夏道が現れたところでアイゼンを脱いで針ノ木峠へ下る。登山道の両脇には石楠花が見られる様になるが爺ヶ岳南尾根と違って花はまだ咲いていないどころか花芽も見られなかった。その代わりに一輪だけだがヒメイチゲを発見。ここで見たのは初めてだ。

 針ノ木峠に到着して針ノ木雪渓を見下ろすが人影は無し。トラバースを終えて峠へ下る途中で一人だけ姿が見えたが、あの距離では峠までまだ1時間以上かかりそうだった。まだ針ノ木峠直下の針ノ木雪渓には夏道は見えていないので、今は最後まで雪渓歩きだ。針ノ木小屋は北側以外の雪はほぼ消えている。そう言えばテント場の雪は2週間前とあまり変化が無く地面は2.3張分くらいしか出ていなかった。

 針ノ木峠から蓮華岳までの間はアイゼンは不要なのは2週間前に歩いて分かっているので、針ノ木峠から蓮華岳側に少し登った箇所で荷物をデポして空身で蓮華岳を往復することにした。今回は大沢右俣は使わないのでこんなことができる。大沢右俣の雪がまだ繋がっているかどうかは稜線から見下ろしても見ることはできないだろう。

 完全に夏道が出ているので夏道を上がっていく。登山道が南斜面から稜線上に移ると南西の風が強まるが朝方よりは風は弱まり体がふらつくことはないし、冷却効果が薄れて防寒着を着たままでは暑くなってきたのでウィンドブレーカに変身して腰にジャンパーを巻きつけて歩いた。

 2754m峰直下は2週間前は雪があったが今は完全に消えていた。そしてここで今年初のキバナシャクナゲの花が咲いていた。そしてミヤマキンバイも。帰りにはミネズオウも見ることができた。7月に入るとこの先はたくさんのコマクサが見られるが、今は花どころか葉っぱもまだ出ていない。

 雪田を横断して2750m峰を越えて鞍部へ。まだ大沢右俣へ雪は続いているが、傾斜が変わる先の様子は見えない。相変わらずここの傾斜はきつく2週間前はよくもまあ登ってきたと自分で感心するほど。

 短い雪を横断すると再び夏道に乗り、ジグザグを切った登山道を登りきると祠がある蓮華岳山頂西の肩に到着。振り返ると立山にかかっていた雲が切れていて徐々に山々の雲が薄くなっているようだ。風もだいぶ落ち着いていた。東の肩が三角点がある蓮華岳山頂だが、見た感じでは西の肩とほとんど高さは変わらない。蓮華岳東尾根の残雪もかなり減っていた。岩陰で風を避けながら短い休憩を取った。

 針ノ木峠へと下っていく途中、もしかしたら誰かとすれ違うかと思ったが無人のままザックデポ地に到着。針ノ木峠に下っても人影は無く、雪渓を見下ろしてもまだ人の姿は見えない。針ノ木岳から下っている途中で見かけた人影はもう針ノ木岳方面に登っていったのか、それともまだ峠に到着していないのか、はたまたヤマクボ沢に入ったのかは不明である。

 アイゼンを装着して軽ピッケル片手に一直線に下っていく。標高2250m付近からガスに突入すると同時に本日初の登山者が見えた。2人組で針ノ木峠方面へと上がっていった。ヤマクボ沢出合より少し下の標高2200m付近では2人組が西側の雪渓を登っているのを発見。この雪渓は小スバリ岳東斜面へと延びる枝沢で上部は岩壁帯であり通常は登る人はいないし、クライマーにも見えないのでどこに向かう計画なのか声をかけると針ノ木峠とのこと。この雪渓は私も間違えたことがある旨を伝え、正しくは私が下ってきた雪渓で、この先で大きく2つに分かれるが左側が正解だと伝えた。初めてのコースだと間違えても当然だろう。

 その後もポツリポツリと登ってくる人とすれ違うが、合計で6人と記録的な少なさだった。私が記憶する針ノ木雪渓の下りでは最も少なかった。針ノ木雪渓への降り口の夏道で2人とすれ違ったのを入れても8人だけ。

 左岸の傾斜が緩やかになりつつある標高1900m付近から花が咲いていないか目を皿のようにしながら歩いていると、高い岩場の上に黄色い物体を発見。肉眼では花だと判別できても種別までは分からず、デジカメのズームで撮影すると葉の形状からミヤマダイコンソウと判明。こんな高さで、というか森林限界以下でミヤマダイコンソウを見たのは初めてであった。こんなところで咲いている理由はただ一つ、長期間雪渓に埋もれていたためだろう。岩場で咲いていた花はこれだけであった。

 左岸が岩壁から普通の土の斜面に変わるといよいよ花の本番だ。最初に登場したのはショウジョウバカマ。雪解け後に真っ先に咲く花なので当然の存在か。さらに下るとまたもや黄色い花が。しかしミヤマダイコンソウよりかなり小さく、斜面に近付いてみるとオオバキスミレで日当たりのいい斜面に群生していた。同じような場所に咲いていたのがシラネアオイで、高山植物の中でも花の大きさは一二を争うサイズ。アルプスの稜線以外では開花時期は梅雨の早い時期なのでまだ雪が残る時期でないと見られない。針ノ木雪渓では主に笹の生えた斜面に咲いているので意外と目立たないのが残念なところで、気付かない人がいるかもしれない。

 花を愛でながら雪渓を下って往路で雪渓に乗った場所に到着してアイゼンを脱ぐ。夏道に合流すると若い男女のペアが入れ違いで雪渓に下っていくところであった。

 夏道に乗ってからもまだ花が楽しめる。まず目に入ったのはオオカメノキ。大沢小屋から荷上げ道に入ると一気に花が増える。最初はキヌガサソウで今年初目撃。この近くにはサンカヨウ、ツマトリソウ、スズランらしき蕾もあった。サンカヨウとキヌガサソウは一緒に見られることも多い。これにエンレイソウも混じるパターンも良く見る組み合わせだ。

 一段低くなった篭川沿いの道に変わると今年初のオオバミゾホウズキ、これまた今年初のヤマガラシ、5月からよく見かけたタネツケバナはまだ花を付けていた。

 赤沢出合の大量の残雪で荷上げ道は対岸へと渡るが、真っ暗な往路では気付かなかった目印のピンクリボンが雪の上に刺さった枝や対岸の木にもたなびいていた。おそらく開山祭の際に設置されたものだろう。右岸に渡るとエンレイソウを発見。右岸の斜面ではサンカヨウの大群落が数か所で見られ、これに混じってエンレイソウやキヌガサソウが咲いていた。さすがにもうニリンソウは咲いていなかった。

 堰堤を梯子で下って林道終点へ。林道では今回見た唯一のスミレであるニョイスミレの群落を発見。もう春咲きのスミレはおしまいらしく、これからは麓ではなく高山で咲くスミレのシーズンだ。林道脇ではネコノメソウ、キジムシロ、ノビネチドリ、ベニバナイチヤクソウ、タニウツギ、クルマムグラ(だと思う)などが見られた。

 林道から舗装された車道に入ってもまだ花は続く。前回はキジムシロ祭り状態であったが、まだ咲残りはあったがだいぶ数を減らしていた。代わりに同じような黄色い花のウマノアシガタが咲いていた。ミヤマキンポウゲとそっくりの花と葉で私には違いが分からないが、この高さではおそらくミヤマキンポウゲではないと思う。その近くにはズダヤクシュの群落が。これも今年初お目見えである。

 林道からショートカットの登山道に入るとタチカメバソウがまだ咲いていた。2週間前は開花のピークであったが今回はずいぶん数が減っていた。そういえば登山道脇ではニリンソウは全く見られず、駐車場の傍らに咲き残りが僅かにあるだけであった。その代わりに扇沢駅近くではオドリコソウが幅を利かせていた。開花直後のミヤマカラマツは一輪だけだったが、シーズンが進めばあちこちで見られる様になるだろう。

 扇沢駅横を通過して駐車場へ下る歩道を歩いているとミヤマキンポウゲ似の黄色い花が目に入った。ウマノアシガタかと思ったが葉の形状が全く異なり、花を良く見るとこれまた微妙に異なることが判明。ネットで調べたらクサノオウとのこと。

 市営第一駐車場に到着すると、珍しくも満車ではなく7,8割の入りであった。なお、扇沢駅直下の有料駐車場はガラガラであった。車内で着替えていると隣の空いたスペースにレンタカーが入り、韓国語を話す若い男女が降りて歩道を上がっていった。意外と外国人が来ているようだ。今は円安だから海外から日本へ来るのはお得感が強いのかも。もしかしたらコロナの規制が終わった今年の夏山シーズンには北アルプスでも外国人の姿が多く見られるかも知れない。

 

山域別2000m峰リスト

 

ホームページトップ